仕事に関わる大切なものをしまっておく業務金庫。今では様々なお店、事務所などで日常的に使われています。ではこの業務金庫、日本では一体いつから使われているものなのでしょうか。その起源に迫ります。
日本の金庫の起源は江戸時代だと言われています。金庫の起源と聞くと、「鍵のついた箱」をイメージする方も多いことでしょう。「鍵」そのものはもっと古くから日本でも使われていました。しかし江戸時代までは、庶民が使う機会はほとんどないものだったようです。治安も良く、家にしっかりとした鍵をかける必要もなかったからです。家の扉には「つっかえ棒」をしておけば十分だったのですね。鍵は、一部のお金持ちが、大切なものを保管しておく蔵に使う程度のものでした。
しかし、江戸時代になると、少し雰囲気が変わります。貨幣制度が全国で統一され、商業が盛んにおこなわれるようになったのです。「お金」で商売をする人の数が増えるにしたがって、それを守るための「業務金庫」も必要とされるようになりました。
江戸時代の業務金庫は、現代の金庫のように金属で作られたものではありません。蔵や箪笥を金庫のように使う場合が多くありました。江戸時代の商家でよく使われたのが、「車箪笥」と呼ばれる箪笥です。中には、お金や商売で使う帳簿などがしまっておけるようになっています。なぜ「車箪笥」と言うのかというと、箪笥の下部に車輪がついていて、簡単に引けるようになっているためです。これは火事の際に、箪笥に縄をつけてすぐに持ち出すための工夫です。現在の業務金庫も、万が一の火災の際に中のものを守る『耐火性能』が基本の性能となっています。江戸時代からずっと変わらず続いている性能なのですね。
このほかにも、「防盗金庫」の役割を果たす箪笥も、江戸時代に登場しています。「帳場箪笥」と呼ばれる箪笥で、やはり商家に置かれていました。一見普通の箪笥なのですが、金目のものや商売の帳簿を隠せるよう、「からくり」が施されています。不正に中のものを取り出そうと思っても、簡単に目当てのものが見つけられないようになっており、「泥棒除け」のために使われていました。中の物を盗られないよう、時間稼ぎをするための「からくり」は、まさに現在の「錠前」だと言えるでしょう。
商売が盛んになった江戸時代から頻繁に使われるようになった業務金庫は、現在、そのルーツを残しながらも劇的に進化しています。「火災から守る」「泥棒から守る」、それぞれの目的に合わせ、より使いやすいように、その機能を進化させています。業務金庫の起源を知ると、「そんなに昔から使われていたんだ!」と新たな発見もあります。そして、現在の金庫に施されている工夫への興味も広がるのではないでしょうか。
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